読みたい本は全て図書館で借りているのだ。
最近はインターネットで居ながらにして予約ができるので、とても助かっている。
人気の本はかなりの順番待ちとなるが、届いた時はメールで知らせてくれるし、世間の騒ぎが収まった後にゆっくり読むのも悪くない。
ところが、そんな私が思わず買ってしまった本がある。
ポール・ギャリコの「猫語の教科書」だ。
猫がタイプライターを打っている表紙に魅了されてしまったのだ。
ポール・ギャリコはかつてスポーツライターとして有名だったが、一般的には「ポセイドンアドベンチャー」の作者として知られている。
何となく硬派なイメージだが、彼はまた、無類の猫好きとしても有名なのである。
この「猫の教科書」は、ある写真家夫婦の飼猫「ツィツァ」が、自分でタイプを打ち、一冊の「猫のためのマニュアル」の原稿を仕上げて編集者に届け、それをポールが解読して出版したと言う体裁になっている。
つまり、猫が猫の為に、「人間をいかにうまく躾けて、快適な生活を手に入れるか」を享受する本なのだ。
読んでみてビックリである。
なんとまぁ、猫達はこんな風に思っていたのね…と、感心するやら、納得するやら。
あの可愛い無垢な表情も、馬鹿な人間をメロメロにするためのテクニックに過ぎず、寝ているポーズではどれが可愛いかとか、たまに人間の膝で仰向けになったらみんな興奮して喜ぶとか、まずい食事は無視してれば次々にバージョンアップした食事が出てくる上に、人間はそんな飼猫を「うちの子はこんな高級品しか食べないの」と自慢の種にして喜ぶとか…
とにかく全ての猫はこの「ツィツァ」のマニュアルを読んだ上で私たち人間と暮らしているのだ。
私たちは知らず知らずの間に、生活の全てが猫中心で回るように猫達に躾けられていたのである。
全編上からの猫目線だが、人間との愛情が芽生える事もちゃんと書いてある。
ただ、とてもシビアだ。
ツィツァは言う。「人間の愛情に対しては用心深くしていなければなりません。なぜなら時として、ムチで打たれるより痛い思いをさせられる事があるからです。」
ポールは後書きで、「猫を一度は飼っておきながら、突然見捨てたり、面倒になったからと言って置き去りにした人達が、これを読んで良心の呵責に襲われるなら、これを書いた猫の努力は無駄ではない」と言っている。
斬新な、クスクス笑ってしまう本だが、実はツィツァが、そしてポールが、一番言いたかったのはこの事かもしれない。


うーん、こう言うポーズも全て計算ずくだったのか…
で、でも…可愛い!
「フッ、馬鹿め、思うツボだわ…」