厳密に言うと所有してるのは土地で、そこに建てた家は他人に貸しているのだ。
最初の借主には条件無しで、自由に建ててもらった。
そのせいか、記念すべき店子第一号はとても気に入って住んでくれていた。
若いご夫婦だったが、すぐに子供さんも生まれ、お互い挨拶をし合うような、割といい関係を結んでいたと思う。
やがて、子供さんの成長と共に家も手狭になり、一家は引っ越してしまった。
かなり仲良くなっていたので、泣きの涙で別れの日を迎えたのが昨日のようだ。(注一)
次の店子はすぐ見つかった。
この夫婦はあまり愛想の良い方ではなかったので、私達家族とも距離を置いた付き合いだった。
前の持ち主が丁寧に使ってくれていたので、家は手直しをせずとも快適に暮らせた様子だったが、その夫婦もやがて子供が生まれるとすぐ引っ越していった。
挨拶もなく、いつの間にか居なくなっていたが、随分子供に手を焼いて、家庭内暴力などで悩んでいたようだった。(注二)
そのあと、なかなか次の借り手が見つからなかった。
うちの近所は田舎なので、家の敷地内にもう一件家を建て、貸している家庭が多いのだが、よそは皆、次々コンスタントに借り手が現れているようだ。
なのにうちには誰も来ない。
家と言うものは、住む人が居ないと段々と朽ちていく。
うちも例外ではなく、いくら周辺を掃除しても見た目の汚らしさは隠しようもなく、そのうち、近所の評判の荒くれ者、「KARASU」のメンバーに外壁を一部壊されてしまい、あまりにも見てくれも悪くなった事だし、このまま放って置いて、ペンキで「KARASU参上」とか書かれたりしたら取り返しがつかないし、今年こそ思い切って解体し、更地に戻そうかと夫と話していた矢先である。
とても華奢な若い女性が訪ねてきた。
彼女はうちの店子になりたいと言う。
しかも外壁の修復も自分ですると言うのだ。
「日曜大工は得意なの。それにちょっと寂れた感じが京町屋風で気に入ったわ」
彼女はそう言うと、修復工事に取り掛かった。
昨日、彼女の夫が挨拶にやってきた。
彼もまたとても若く、細面のなかなかのイケメンだ。
ちょっと松潤に似てる。
この夫婦とはうまくやっていけそうな気がする。
久々に活気づいた別棟に夫も子供たちも、そして誰よりもライアンが大喜びである。
聞けば奥さんは妊娠中らしい。
可愛い赤ちゃんの元気な声を聞けるのが今から待ち遠しい。

うすうす感づいていらっしゃったと思いますが、そう、店子はツバメです!
二年間来なかったのに、今年はやってきました。
すでに修復完了です!
文中の()、注一・ニ・三はサイドバーのカテゴリー「ツバメ」を読んで頂けるとよくわかりますので、是非読んでね~

また毎朝ツバメさんに会えるにゃ。
母ちゃんは「ツバジュン」って名前つけたみたいにゃよ…バカだねー