小さな店舗なのでレジもすれば品出しもする。
私の目論見通り、店は大して忙しくもなく、人間関係も概ね良好、まずまずのスタートを切ったと言えるだろう。
その店は近くに2校の大学と1校の中高があるため、夕方は学生たちで溢れ返る。
1日で1番店が活気づく時間である。
私は大抵その時間帯に入っているので、目が回るほど忙しいのだが、客が若い子ばかりなので何かと楽しめてウハウハである。
ただ、いくらジャニーズ系のカッコいい子でも彼らは学生ゆえ、大した買い物はしない。
うまい棒1本、チロルチョコ1個のお買い上げなんてザラである。
「お前たち、お菓子はいいから弁当を買え!おにぎりを買え!サンドイッチを、パンを買うんだ!」
レジを打ちながら私はいつも心で念じる。
もうすぐ閉店だ。
そしたら、売れ残った弁当やおにぎりは廃棄処分となる。
廃棄、要するに全て捨てるのだ。
あり得ない。
食べ物を捨てるなんて。
それもまだ充分食べられる物を。
弁当やおにぎりは100歩譲るとしても(いや譲れないが)パンに至っては翌日が賞味期限の物を廃棄するのだ。
あり得ない。
何度も言うが、あり得ない。
しかも、その恐ろしい廃棄処分の役目が、なななんと、この私なのだ。
毎回毎回カゴに3杯ぐらいのパンやおにぎりを、この私がごみ袋に放り込んでいる。
賞味期限が2・3日過ぎてたってモノともしない、いや、むしろ賞味期限が過ぎてからが勝負だとさえ思っているこの私が。
震える手で捨てているその横で、まだ若い本社の社員がボケーと見ている。
そこで私はため息交じりに言ってやる。
「あーもったいない。
あんたら食べ物粗末にしたらあかんってお母ちゃんに言われへんかったか?
おばちゃんらの世代はな、米残したら目ぇ潰れるって言われて育ってんねん。
ホンマ、バチ当たんで。
半額で売ったらええやん。
それがあかんねやったら、あんたら社員が安く買い取ったらよろしいやん」
しかしその若い社員は「いやぁ決まりですから」の一点張り、「私たち社員は常に安く買えるんで。それに本社では毎日もっと大量の廃棄が出ますよ。まぁ捨てるほど作ってるってことですよね、アハハ」
何だと!
世の中にはな、その日のおマンマにも困ってる人間が五万といるんだよ。
テメェがそうやってヘラヘラ笑ってる今この瞬間にも餓えて死んでいく子供たちがいるんだよ。
いや、て言うか、ナニ?
あんたらは常に安く買ってるだと?
私らパートには割引制度もないのに?
くれ!
捨てるぐらいなら、全部私にくれ!
と本音をぶちまけたところで何がどう改善されるわけでもないだろうし、私は今日も黙って弁当を捨てる。
後ろに立っているはずの、もったいないオバケの影に怯えながら、黙って今日も泣きながら、弁当を捨てるのであった。

ホンマにもったいない話でんな~
ネコもエコバッグで暮らしてる家庭なのに。。