先日、携帯電話を買い換えるためショップを訪れた時の事。
店内のソファーには、小学校に上がる前ぐらいの小さな女の子を連れた若い母親が座って順番を待っていた。
女の子はナナカという名で、自分の携帯電話を買って貰う為に来たらしく、とても嬉しそうにお行儀良く母親の隣で待っていた。
ところが、店員に母親が呼ばれた途端、何がどうしたのか、ナナカは急にヘソを曲げ、不機嫌になった。
母親がどんなに呼んでも「いや!」の一点張りである。
仕方なく、母親が1人で契約を進める。
途中何度も「ナナカ!色どうする?」「ナナカ!柄は何にする?」と母親が振り返りながら聞くのだが、ナナカはガンとして「いや!」としか言わない。
イライラし始めた母親は「もういいわ!白でウルトラマンにしとくで!」とどなったあと、もう一切振り向かず契約作業を進めた。
そのうち、ジッとしてるのに飽きてたナナカは店内をウロウロし始めた。
さっきまでの不機嫌が嘘のように、ディスプレイされている携帯電話をいじりながらあちこちピョンピョン飛び跳ねている。
と、ナナカの手が棚に積んであった書類に当たり、バラバラと書類を撒き散らしてしまった。
ナナカはそぉっと周りを見渡す。
当然、彼女をずっと見続けている私と目が合う。
私に見られている事に気付いたナナカは、「あれ?こんなところに紙がいっぱい落ちてるわ、私が落としたんじゃないけど拾ってあげよう」という感じの小芝居を打ち始めた。
可愛いなぁと思って見ていると、何とナナカはせっかく拾い集めた書類をビリっと激しく破るとその場に叩きつけた。
ナナカは何もなかったように母親の元へ走り寄り、真新しいウルトラマンの白い携帯電話を手に、ニコニコと店を後にした。
この短い時間にナナカの中で目まぐるしく変わった感情の変化は、私には計り知れないものであった。
だから子供はキライなんだ…