彼らはどうやら沿線の電気系統トラブルだとかそういったものに対応する人達なのだと思うが、じっくりと観察すると、これがなかなかいい。
まず、彼らは電車がどんなにすいていても決して座らない。
それは恐らく社則で決められてるんだろうけれど、誰も見ちゃいないのにキチンと守る姿勢が、高校球児のそれにも似て気持ちいい。
彼らはそれぞれに大きな鍵束を所持しているのだが、それがズボンのベルト通しにガッチリと繋がれてるのもいい。
わが身に何が起こったとしても、鍵を奪われてはならぬと言う、まるで刑事における拳銃のような鍵束の立ち位置に、何だか沿線には盗まれてはならぬ国家の機密的な何かが隠されてるんじゃないかと想像が膨らむ。
彼らはたいてい、ベテランの中に新人を組み入れたグループになっている。
この新人がまたいい。
まだ折りジワが残る真新しい作業着を身にまとい、緊張気味に先輩の後ろにひっそりたたずむ。
姿勢良く立ってはいるが、たまにケータイをいじっているのも、イマドキの若者ぽくていい。
先輩達は見て見ぬふりをしているが、私だけはケータイに夢中になっている間に鍵束を盗まれたらどうしよう?と鍵束とベルトを繋ぐ金具がちゃんと機能してるか指差し確認しそうになる。
目的駅で、彼らは一般の乗客の邪魔にならぬよう、1番後から、しかも迅速に降りてゆく。
今日も何処かの沿線で、彼らの手に寄って国家の機密は守られているのだろう。
史上三番目の低投票率の参院選を終え、明日の日本はこういう人達に支えられてるんじゃないか…と、ちょっと思う昼下がりであった。

作業員の皆さん、母ちゃんの視線に良く耐えた!