一般的に、子供は運動会が好きと言うのは、大人側の常識で、うちの娘は運動会前日に雨乞いをするタイプである。
6年生の運動会のメインは「組体操」。
これが娘にとっての苦痛の種だった。
娘は体が大きいので、本人の意思とは関係なく、何があっても、ピラミッドやタワーでは最下段である。
そりゃあ一番上に乗る子は乗る子で、恐怖感もあるだろうし、大変だろうが、何てったって一番下の子は、重いわ痛いわ目立たないわ写真には写らないわ、結構厳しいポジションなのだ。
組体操の練習が始まってから、娘は筋肉痛もさる事ながら、精神的にかなりへこんでいた。
最初に2人組演技で、しゃがんだ状態からペアの子を肩車して立ち上がり、更に中腰になって後ろへ頭を抜いて膝へその子を立たせる…と言う荒業があり、娘はどうしてもそれが出来なかったらしい。
体の大きさと力は必ずしも比例しない。
娘はデカい割りには非力なのだ。
可哀想な娘は段々食欲もなくなり、毎朝お腹が痛くなり、殆んど登校拒否状態。
学校へ行くという事に、それほど執着しない私だが、今回ばかりは心を鬼にした。
組体操はチームプレーである。
一人の失敗は他の大勢の迷惑になる。
毎日弱気発言を繰り返し、逃げ腰になる娘を、「わりゃ~何のためにデカイ図体しとるんじゃ~!ウドか?お前はウドの大木なのか?オラオラ~!」と、優しく励まし続け、娘も泣く泣く頑張っていたが、運動会前日に、先生から「本番では先生が横から補助します」と言われたとしょんぼりしていた。
上に乗る子の安全を考えたら、それは当然の処置なので、娘には「ちゃんと先生にお礼を言って、上に乗る子にも謝まらなあかんで」と言い聞かせた。
娘は己の不甲斐無さを嘆いていたが、やるだけの事はやったのだ。仕方あるまい。
そして迎えた運動会当日。
爽やかな秋晴れの空とは裏腹に、娘にはしゃいだ様子はない。
100メートル走やハードル走など、遅いなりに何とかこなし、いよいよ組体操の時が来た。
始まってすぐ、問題の肩車のシーンがやって来た。
だが娘の横に先生の姿はない。
思わず人垣をかき分けて前へ進み出た。
娘が足を踏ん張って、上の子をしっかり支えて自力で立ち上がっている。
続けてプルプル震えながらも、ちゃんと膝へ下ろす事が出来た。
やった!
私は涙のガッツポーズ。
その後の演技も全て、一番下で、手を抜く事なく、歯を食いしばって自分の責任を果たした。
よくやった。
よく頑張ったよ。
戻ってきた娘は、はにかみながらも、満面の笑顔だった。
諦めなくて良かった。
聞くと、本番直前に自分でやりますと、先生に宣言したらしい。
信じてくれた先生と、上に乗る子に感謝。
肩車ができなくったって、人生何にも困りはしないけど、出来なかった事が出来るようになる喜びや達成感を娘に知って欲しかった。
一人は皆の為に、皆は一人の為に、の精神を知って欲しかった。
逃げずに頑張った事は、きっとこの先、力になる。
難関を無事クリアして放心してる娘よ。
今日は代休。
2人で何か美味しい物を食べに行こうか。
すっかりニコニコ顔の娘は、中学生になっても体育祭があると言う事を、まだ知らない…。

ガンバレ!
オレを体操服の代わりに持ってけ!

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