何もない平坦な道でつまづいてみたり、たった10段の階段を駆け上れなかったり。
嫌だわ、運動不足なのねと、そっとヒールの低い靴に変え、エスカレーターを探す、それで何とか今日まで自分を騙してきた。
しかし、ついに先日、恐ろしい事が起きてしまった。
それは友人とランチに行った時の事。
久しぶりの和食。
テーブルに運ばれる2段重ねの器のフタには菊の花弁があしらわれ、中を開ければそれはそれは美味しそうな、和食ならではの凝った品々がたくさん入っている。
「まぁステキ!やっぱり和食はいいわね~」と舌鼓を打ち、さて、頂きましょう…と箸で口元へ運んだその瞬間、あら不思議…見えないのである。
確かに栗きんとんを箸で挟んだはずなのに、口元に来たそれは、なにやらただ黄色いだけの物体なのだ。
そんなはずはない。
もう一度。
今度はエビよ。
ほら、美味しそうなエビ。
箸で挟んでさぁ食べましょう。
するとやっぱり、それは私の口元でただの赤っぽい物体に変化する。
おかしい。
何かがおかしい。
この店変な原料使ってんじゃないの?
何かスライム的な、触ると変化する原料で作ってんじゃない?
「目で食べる」とはよく言ったもので、本当に何を食べてるか見えないと、美味しさも半減する。
私はすっかり疲れ果て、口数も少なく帰路についた。
ええ、ほんとはわかってますよ。
わかってますとも。
その昔、母親が新聞を遠くに離して読んでるのを見て、不思議でしょうがなかった。
見えなきゃ近くに寄せればいいのに、何で遠くに離すのか?
それが不思議だったのだ。
気がつけば自分もまた、近くの物が見えなくなっている。
娘が「見てみて~」と私の鼻先へ突き付ける絵が見えず、「どれどれ」と遠く離すと見えるのだ。
うすうす気づいてはいたが、まさかテーブルの距離で見えてる物が口元で見えなくなるとは。。
ついに現実として受け入れ、認める時が来た。
人は誰でも歳をとる。
どう歳をとるか、それが大事なのだ。
歳を重ねて更に美しく…それを願ってお洒落な老眼鏡を買いに行くとしますか。


こちらがそのお料理。
この距離なら見えるんですけどねー

は?見えないとかあり得な~い(イン・新箱)
いやいや、あんたの方があり得ない。
何やってんの??
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