問い合わせるとモノレールが折り返して戻るまで40分かかり、それは飛行機の出発時間の5分前となる。
何とかそれを待って、自分だけギリギリの搭乗をさせて貰えないかとCAさんに何度も頼んでみたが、どうしても無理だと言われ、泣く泣く彼女は飛行機に乗り込んだ。
やがて出発の時間となり、暗い気持ちでシートベルトを締めたその時、飛行機の通路を先ほどのCAさんが走って来るのが見えた。
彼女の肩には見覚えのある大きなカバンが…
そう、そのCAさんはモノレールの駅まで行き、私の友人の荷物を受け取るなり走って機内まで持ってきてくれたのだ。
感動のあまりCAさんに抱きついて大泣きした、と言う友人の話を聞いて、おおいに羨ましくなった。
羨ましいのは親切をされた友人ではない。
親切をしたCAさんの方だ。
私も親切がしたい。
相手が泣いて喜ぶような親切な人になってみたい。
そのチャンスは案外早くやって来た。
夫と車で買い物に出掛けた時である。
家を出てすぐの信号で止まった時にふと歩道を見ると、自転車を押した若い女性が何やら明らかに困っている。
私はすぐさま車を降り、どうしました?と彼女に近づいた。
その人は長いヒラヒラとしたスカートを自転車のチェーンに巻き込まれてしまってニッチもサッチもいかなくなっていた。
私は自転車を支えてあげたりスカートを引っ張ってあげたりかなり頑張ったがスカートはどうしてもとれない。
もう切るしかない、と彼女と合意し、私は家までハサミを取りに行った。
ハサミを手に現場に戻る途中、車を路肩に停めた夫がこちらに向って来て、
「切るのはちょっと待って。」と、何だかやけにテキパキ走り去って行った。
私は彼女の元に戻り、大きな裁ちバサミを手にしたまま仕方なくボヤーと立ち尽くす。
そこへ颯爽と夫が現れ、フトコロからキラリとドライバーを取り出した。
夫は手さばきも鮮やかにチェーンカバーを取り外し、見事に、巻きついたスカートをクルクルと抜き取った。
「有難うございます」その女性は泣いて喜びはしなかったけど、「切らずに済んで良かった」と何度も言った。
せっかくの、親切な人になれるチャンスを失った私は、「ハハ…ホント、良かったね」と、裁ちバサミを後ろ手に隠しながら微笑むしかなかった。

だからと言って、爪切りやブラッシングで親切心振りかざすのやめて下さい!
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