彼女の趣味は、宝クジが当たった時に建てる家の設計図を描く事だ。
1度見せてもらったが、あまりの出来栄えに、宝クジなんかに夢託してないで、この才能を生かす仕事をした方がよっぽど確実なんじゃないかと思ったが、その設計に見合う土地まで物色している彼女を止めることなど私にはできない。
そんな彼女が幼少の頃の話である。
三姉妹の真ん中だった彼女は姉からいつも「お前は橋の下で拾われたんだよ」という昭和の鉄板ネタを言われ続けていた。
いつしか彼女は「そうだ、私はこの家の子じゃない。きっと宇宙からやってきたんだ」と思うようになった。
「その星では私はとってもお金持ちなのよ。いつかお迎えが来てくれる」
妄想に浸る彼女は自分の産まれたはずのその星を「サース星」と名付けた。
毎日夜空を見上げ、サース星からの使者を待っていた彼女も、大きくなるにつれ、そんな妄想など忘れてしまっていた。
そして彼女が高校2年になった時の事である。
新しいクラスで席に着き、ふと教室の柱を見ると、なんとそこに「サース星人」と彫ってあるではないか。
彼女はその事を誰にも喋ってはいない。
自分も忘れかけてたそれがなぜこの教室に?
目を疑った彼女はもう一度柱の字を見つめる。
読みにくい汚い字ではあるが、それは確かに平仮名で「さーすせいじん」と書いてある。
もしや、このクラスにサース星人がいるのか?
同じサース星人からのメッセージなのか?
それともサース星からの使者がついに来たのか?
パニクる彼女に後ろの席の友人が「どうしたの?」と声をかけた。
彼女は震える声で聞いた。
「ねぇここ、何て書いてある?」
その子は事もなげに読み上げた。
「さしすせそ」

こんな感じだったんだって。

オレもサース星に帰りたい。。。
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