それは自分の名前を認識した時ではないだろうか。
ワケのわからない人間語で呼びかけられ怯えていた猫が、ある日それは自分の名前なんだと気付く。
その瞬間から、その人間と猫との間に、揺ぎ無い信頼関係が芽生える。
世の中には、呼ぶと「ニャー」と返事をする猫もいるらしく、羨ましい限りだが、ライアンは無口なので、それは望めない。
だがしかし、「ライアン!」と呼べば振り向いてくれる。
外の鳥さんに気をとられてる時でも、振り向く。
生後間もなく捨てられて、自ら望んでうちに来たわけではない、あの小さかった子が、自分には「ライアン」と言う名前があると認識している。
そう思っただけで泣けてくる私が、家族に同意を求めるべく、熱弁を奮っていると、娘が「え~、それって呼び掛け口調に反応してるだけちゃう?」と言う。
そんなバカな!
ならば、試してみようではないか。
「太郎!」
振り向かない。
「トラ!」
振り向かない。
「ごんちゃん!」
やっぱり振り向かない。
ほーら、ごらん。
この子はわかってるのよ!
その時息子がふと、呼びかけた。
「マイケル!」
振り向いた…
…しばし沈黙の後、家族爆笑。
そうか、ライアンは外人っぽいカタカナ名に反応していたのか。
まぁそれでもいいや。
自分に名前があるって事を認識してるのは、間違いないんだから。

呼んだ?
スポンサーサイト